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そこに女性作家たちの戦術がある

ロシア文学とセクシュアリティ 〜二十世紀初頭の女性向け大衆小説を読む〜

 

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「男/女」の規範に必ずしもあてはまらない文化がロシア文学のなかで花開いた「銀の時代」と呼ばれる時代が百年前にあった。
そしてその二十世紀初頭のロシアには都市のミドルクラスの女性たちに人気を博した三人の女性作家による女性向け大衆小説もあった。それらの作品はいかなる方法を用いて非規範的な〈性〉のあり方を呈示し、「男/女」や「異性愛/同性愛」といったジェンダーやセクシュアリティに向き合っていたのか。
小説のなかで既存の「男/女」の秩序におさまらない〈性〉の諸相がいかに示され、そうした表象を支える原理がいかなるものであったのか、当時の社会・文化的コンテクストを参照しつつ明らかにしていくと、彼女たちの小説のなかに豊穣な〈性〉文化が存在していたことが見えてくる。

定 価:2500円 税別

著者安野直
ISBN978-4-910100-26-5 C0098
出版年:2022.10
判型:四六判 頁数:320ページ
シリーズ名:
在 庫:アリ
分 野:文芸評論

【主な目次】
序章 二十世紀初頭の女性向け大衆小説とジェンダー研究

研究の目的と問題設定/ロシアにおける性別役割分業体制の形成/女性向け大衆小説へのアプローチ

第一章 女性向け大衆小説のベストセラー化とフェミニズムのパラドクス
はじめに/女性解放運動と「女らしさ」??『ニーヴァ』にあらわれる女性イメージ/ミドルクラスの女性読者たちの欲望/ヴォリフ社の活動??『ヴォリフ書店ニュース』を中心に/ベストセラー女性作家たちのイメージ戦略/まとめ―「流行の思想と興味のデパート」としての女性向け大衆小説

第二章 ナグロツカヤ『ディオニュソスの怒り』における「新しい女性」像
はじめに/「新しい女性」とは何か/ジェンダーの境界の曖昧化という言説の陥穽/女性解放としての「スチヒーヤ」の克服/『ディオニュソスの怒り』を読む/まとめ―性別二元論への回帰と家族関係のねじれ

第三章 ヴェルビツカヤ『幸福の鍵』における「死」と「幸福」
はじめに/マーニャの死の解釈をめぐって/『幸福の鍵』に描かれる「新しい女性」像/マーニャの死が意味するもの/まとめ―『幸福の鍵』における「幸福」

第四章 チャールスカヤの少女小説における「冒険する少女」たち
はじめに/冒険小説としての少女小説/問題の所在/少女の男装の意味/少女たちの親密な関係性/冒険の行き着く先??家庭からの逃避とあらたな共同体の形成/まとめ―家庭からの逃走する少女たち

第五章 男性同性愛をめぐる言説の構成と変容
はじめに/ロシアにおける同性愛をめぐるふたつのパラダイム/『翼』を読む/ナグロツカヤの作品における男性同性愛の表象/まとめ―「銀」から「ブロンズ」へ??「男性同性愛」の表象の変遷

終章 非規範的な〈性〉をめぐる境界の編成
 議論の総括/結論―「平等」と「差異」をめぐって・「弱者」の戦術

補論 大衆小説にあらわれる「男らしさ」と身体
はじめに/「男らしさ」と近代的身体/『世界チャンピオン』における「男らしさ」の構築/ホモエロティシズムへの欲望と脆弱な男性身体/まとめ―〔ヘテロ〕セクシズムの再生産と自壊の契機

安野直(やすの すなお)
1992年長崎県生まれ。早稲田大学文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、早稲田大学文学学術院(文化構想学部現代人間論系)助教。専門はロシア文学、およびロシアのセクシュアル・マイノリティにかんする研究。著書に『ロシアの「LGBT」??性的少数者の過去と現在』(群像社、2019年)。おもな論文に、「ベストセラー現象を読み解く」(『ロシア語ロシア文学研究』第52号、2020年、日本ロシア文学会賞受賞)、“Russian Literature and Representation of Love between Men in the Post-Soviet Era”(『桐朋学園大学研究紀要』第48号、2022年)など。2020年、平塚らいてう賞受賞(日本女子大学)。



 
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