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これまでの書評・紹介記事から
(〜2011年10月)


 




▼青春小説のような語り口ながら、不条理で幻想的、そしてどこかコミカルなシチュエーション…/単なるカリカチュアに終わらない感動…/まだ現実から浮遊し続けなければ自由になれないロシアの魂/小説を読んでここまで興奮したのは久しぶりだ/
▼何気なく読み出すと全く目が離せなくなる
▼時代を超えて読者の共感を誘う
▼単なるミステリ、パニック小説として楽しむにはあまりにも私たちの現実と近い/現実と空想が入り混じった不安定さ…は監視社会化しつつある現代日本においても他人事ではない
▼シュールで幻想的なきのこの王国の描写が素晴らしい/作曲家の余儀という範疇をはるかに超え、さまざまな角度からの楽しみがちりばめられた一冊
▼ふたたび見いだされるべき、じつに魅力的なトルストイ
▼心に重く残る一冊である/男の戦争観、男の言葉、男の感覚とは違った戦争
▼現代ロシア文学の代表作がついに日本上陸/冒険的な書き方をしている小説であるにもかかわらず文句なくおもしろい
▼従来にない新鮮な視点を感じさせる。とりわけソフィア夫人の妻の立場に関する『等身大の復権』は…
▼絵は博物学的に正確、つまりリアリズムの極致で、生き物の躍動感にあふれ、風景はみずみずしい
▼それぞれの少女時代を、彼女たちがいつ終えるのか。読者はそれを、畏怖の念をもって眺めるだろう/時代や国境を軽々と飛び越える普遍的少女文学
▼十数年間、いつも手近に置いてきた…自分に嫌気がさすとページを繰りたくなる 俳優 三國連太郎
▼ロシアの自然と文学の奥深さを教えてくれる愛すべき作家……彼自身と周囲の人間の暮らしが自然の中にとけ込んで……
▼今まで一度もスポットライトを当てられることのなかった自殺者たちに向けられた著者のまなざし……生と死が不分明となった時代の鏡……
▼つつましい淡い交情の報告にはどこか真摯なものが認められる……
▼どの一行からも、ロシアの風が吹いてくる……誠実な詩人のつぶやき……身辺雑記が突然、小説に昇華……
▼小説の魔法にかかり永遠に出会う……
▼詩を出すとはどういうことか。「詩の言葉は、その不定の読者を『未来』に向かって開いている」……
▼さわやかな二重の無垢から発語する作者の歓びが……
▼凡ならざる眼識の持主……比較文学で読む精神のドラマ……
▼わが国初の本格的な紹介という点でも、そのパイオニア的な意味は小さくない……
▼現代文学の剛速球投手が描破した「大いなる悲哀の物語」……
▼芝居の原点とを重ね問う追及の仕方の真摯さが……
▼20世紀という時代をひとつの運命としてわが身にひきうけざるをえなかった女性たち……
▼戦争を葬る力を持つ一冊……
 
 

  
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宇宙飛行士オモン・ラー
ペレーヴィン 尾山慎二 訳 1,500円+税 2010.6刊

週刊スパ 2010年7月22日号
 卯月 鮎
 
「青春小説のような語り口ながら、不条理で幻想的、そしてどこかコミカルなシチュエーションが襲い来て、私たちを思いもかけない異次元に連れ去る。」「ソ連の威信を保つため、帰還不能な月面旅行へ出るオモンと仲間たち。あのライカ犬が頭をよぎる。よくよく考えると悲惨な話ではあるが、独特の乾いたトーンで、まとわりつくような重たい感情は湧かない。それよりもこけおどしの張りぼての中で懸命にペダルをこぐオモンの姿が、滑稽でもあり、愛おしくもある。ふと自分の姿と重なるのは、この現実世界も空虚な張りぼてで満たされているから・・・・・・なのだろうか。」

ミステリマガジン 2010年月9月号
 大森 望
 
「いやはや、ここまでブラックな宇宙SFも珍しい。なにしろルノホートは自転車を改造したもので、首尾よく月面着陸を果たした“僕”は、電話で(!?)伝えられる命令に従い、必死にペダルを漕ぎつづけるのである。」「オモンが上から2段めの修正段に乗るジーマとピンク・フロイドについて語り合う場面がすばらしい。」カバー袖の内容紹介は「内容とのあまりの落差に眩暈がするが、読み終えてみると、この紹介文自体、真面目に書いているのになぜか不条理コメディになってしまう本書に対する一種のメタテキストとなっていて、しみじみとおかしい。」

小説推理 2010年月9月号
 林 哲矢/FONT>氏
 
「ソビエトの華々しい宇宙開発史を、陳腐な欺瞞と出来損ないのガラクタの山に置き換える、皮肉な不条理小説だ。」「愚直なまでに生真面目に使命に身を捧げ、ついに真実の境を踏み越えてしまうオモンが、おかしくも哀しい。」

週刊読書人 2010年月7月23日号
 森下一仁
 
「書割の前でポンコツ小道具を操るような人生を描きながら、青春の夢や努力の意味を考えさせて、単なるカリカチュアに終わらない感動があります。」

ナンクロメイト 2010年月9月号
 牧 眞司
 
「悲惨な任務を押しつけられ、しだいに現実感覚を喪失していく。俺、なんでこんなことしてるの? 英雄観への風刺、国家主義批判とも受けとれるが、そんな思想レベルにとどまらず、もっと徹底したブラックジョークがぎっしり詰まっている。抱腹絶倒の傑作だ。」

本の雑誌 2010年月9月号 
 山崎まどか
 
「ソ連時代にここではないどこか、すなわち宇宙を夢見る少年が主人公の奇妙なSFファンタジーだ。わざとキッチュなセットで撮ったSF映画のようなシニカルな愛らしさがある。」「混乱しながらも〈フライトはまだ続いているのだ〉と思う主人公に、まだ現実から浮遊し続けなければ自由になれないロシアの魂を感じる。」

読売新聞 2010年月8月22日 
 都甲幸治
 
「小説を読んでここまで興奮したのは久しぶりだ。日本ではロシアの村上春樹として紹介されているペレーヴィンだが、似ているのは純文学と大衆文学の垣根を壊したというところまでである。グロテスクなほどのパロディ、辛辣な社会批評、圧倒的な奇想など、ペレーヴィンの新鮮さは誰にも似ていない。」

図書新聞 2010年9月11日号 
 諸星典子
 
「オモンは、同志の死を経て月面でルノホートを走らせる。身動きのとれないルノホートで思い出すのは、夏ごとにモスクワ郊外の村で過ごした自転車のサドルの上の時間。あの夏の日を暗闇で思い出すのか、思い出されているのは今なのか。闇と光、幸福と孤独がクロスして、すべては幻想となる。」

GINZA 11月号 
 豊崎由美
 
「かわり種のSFであると同時に、ソ連の宇宙開発にまつわる辛辣なジョーク小説であり、共産主義体制を茶化すカリカチュア小説であり、それゆえに小説の中にはたくさんの諧謔性豊かな笑いが仕込まれています。」「現在進行形のロシア文学に出会いたい方はぜひ!」


ルイブニコフ2等大尉
クプリーン 紙谷直機 訳 1,800円+税 2010.1刊

日本とユーラシア 2010年3月15日
 村野克明氏(編集者)
 
「2月初め、三省堂本店1階のロシア文学コーナーでは新刊書用の台に10冊ほど積み上げられた本書が断然目立っていた。たぶんNHKの『坂の上の雲』の影響で日露戦争に関心を持って本書を購入した人もあるのではないか。カバーの軍人の肖像がそう思わせるに十分だ。肝心の本文は何気なく読み出すと全く目が離せなくなる代物で車中とか寝床では要注意である。はつらつとした躍動感、しかも腰の据わった堂々たる日本語は訳者の研鑽の賜物だろう。」

ミステリマガジン 2010年4月号
 古山裕樹
 
「表題作は日露戦争を背景に、日本のスパイと疑われた復員軍人と、彼の正体をあばこうとするジャーナリストとの駆け引きを描いている。もちろんスパイ小説を意識しているわけではないが、丁寧な人物描写に基づく心理戦の描写は、軍人の正体をめぐる謎と重なって、のどかながらもスリリングな情景を創りあげている。」


ロシアの民話
アファナーシエフ 金本源之助 訳 2,500円+税 2009.1〜2010.4刊

望 星 2010年1月号
 都築隆広
 
「『ロシアのグリム』と呼ばれたアファナーシエフは…本家グリムをも凌ぐ六百もの民話を集めた。そのなかから、二百以上の民話が全3巻で刊行される。」「本書の冒頭を飾るのは…『狐と狼』。同タイトルの話が五話も続けて収録されているのは、蒐集された地方によって細部が異なるためだ。」「あどけない王子や末っ子が遠い国へと旅立ち、女たちの助けを借りながら怪物に勝利し、財宝を持ち帰る。典型的なおとぎ話だが、家を出た青年たちの自立へのドラマとしても読むことができ、時代を超えて読者の共感を誘う。」


猫の町
ポドリスキイ 津和田美佳 訳 1,500円+税 2009.8刊

週刊文春 2009年10月15日
 辻村深月氏(作家)
 
「三十年前に書かれた本作品は、単なるミステリ、パニック小説として楽しむにはあまりにも私たちの現実と近い。作品に一貫して流れる、常に誰かにつけられている、見えない黒幕の手によって全てが動かされていると感じる狂気への誘いは、旧ソ連で作者が感じた閉塞感の表れであるようにも読めるし、私たちが日々感じる不特定多数のマスの目への恐怖でもある。」

ツカサネット新聞 2009年9月30日
 林田力
 
「人々は猫を愛し、街には飼い猫や野良猫が溢れていた。しかし、猫を媒介としたウィルスが人に感染すると、街は封鎖され、住人は猫の虐殺を始める。粗筋をまとめるならば現代の新型インフルエンザ騒動を髣髴とさせる典型的なパニック小説」だが、「実際の読後感は大きく異なる」。「本書の中心は」「現実と空想が入り混じった不安定さが特徴で」、「人々の不安は」「全体主義体制の圧迫感が背景になっている。この点は監視社会化しつつある現代日本においても他人事ではない」


プロコフィエフ短編集
サブリナ・エレオノーラ/豊田菜穂子 共訳 1,800円+税 2009.8刊

産経新聞 2010年1月24日
 飯沢耕太郎氏(きのこ文学研究家)
 
「セルゲイ・プロコフィエフが、実は短編小説の名手であったことはこれまでまったく知られていなかった。」「一読した印象は、日本の戦前のモダニズム小説、吉行エイスケや稲垣足穂の作品に近い。」「文体は軽やかでリズミカル、そのあたりは彼が作曲した音楽とも共通している。」「『きのこ文学研究家』としては『毒キノコの話』という物語が入っているのがとてもうれしい。」「ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に通じるものがあり、シュールで幻想的なきのこの王国の描写が素晴らしい。」「その豊かな発想力と表現力を、長編小説にも発揮する機会がなかったのが、ちょっと残念ではある。」

東京新聞 2009年10月30日夕刊 
 岡部真一郎氏(明治学院大学教授、音楽学)
 
「筆の立つ作曲家として名を馳せたプロコフィエフは、同時に、文才にも秀で、数多くの短編小説を物していた。」「若き日のプロコフィエフが日本に滞在したことは、知る人ぞ知るところだ。本書に収められた短編は、主に、この亡命の旅の途中、そして日本での日々にしたためられたものである。」「作曲家の余儀という範疇をはるかに超え、さまざまな角度からの楽しみがちりばめられた一冊である。」

春 秋 2009年11月号 連載エッセイ―指揮者が行くF「雨の蓼科 秋晴れのパリ」
 矢崎彦太郎氏(指揮者)
 
「子供の頃から手当たり次第乱読するのが大好きだから、雨の蓼科では持って行った本を片端から読み漁った。その中で傑作だったのは、渋谷の書店で偶然見つけたプロコフィエフ短編集。」「あのプロコフィエフが短編小説を書いていたとは知らなかった。」「巻末には日本滞在日記が掲載されているので記録としても興味深いが、小説は玄人はだしだ。」「プロットは確かにプロコフィエフの音楽を彷彿とさせる。キビキビした躍動感、急な転調のような意外性、スパイスの効いた和音を思わせる軽い皮肉含みの洒落っ気に富んでいて、一気に読み終わった。」


カフカースのとりこ
トルストイ 青木明子 訳 1,000円+税 2009.5刊

中日新聞 2009年11月4日/東京新聞 11月3日 エッセイ 「小さな本の大きな世界」
 長田弘氏(詩人)
 
「掌編というべき小さな物語なのに、その語りに引き入れられて、大きな森のなかへ踏み入っていくような。」「けれんのない緊密なタッチと、むだのない簡潔な言葉。あの『戦争と平和』を書き終えて、次にあの『アンナ・カレーニナ』を書きだすまでのあいだに、子どもたちにむけて書かれたという「樹木の話」のような日々の小さな秘密の話のなかには、ふたたび見いだされるべき、じつに魅力的なトルストイがいます。」


戦争は女の顔をしていない
アレクシエーヴィチ 三浦みどり 訳 2,000円+税 2008.7刊

しんぶん赤旗 2008年12月14日
 齊藤治子氏(ユーラシア研究所所長)
 
「祖国防衛のために十六、七歳で志願して、砲兵、狙撃兵、工兵、歩兵、飛行士など、戦場のまっただなかにいた少女、子持ち女性が、白兵戦で敵を殺す恐ろしさ、幼児を連れて戦場を移動する危うさ、生理用品がなく行軍中に草で血を拭く恥ずかしさ、生理が止まってしまう衝撃、男性の将兵からの陵辱、などを語るとき、戦争の嗜虐性はいっそう明確になる。」「心に重く残る一冊である。」

熊本日日新聞 2008年8月15日
 野田正彰
 
「戦争の記憶の瓦礫を身をもって片付けていった女たちの声が、ひとつひとつ書き留められている。男の戦争観で戦争を捉えてきた私たちは、本書で、従軍看護婦、沖縄戦の少女、侵略地に暮らした女性などの悲しみを十分に聞いてこなかったことを知るだろう。」


チャパーエフと空虚
ペレーヴィン 三浦岳 訳 2,300円+税 2007.5刊

新 潮  2007年7月号 連載「私は夢見られた 〜小説をめぐって(32)」
 保坂和志氏(作家)
 
大乗仏教の思想をあらわすナーガールジュナの書いた『中論』を解説しつつ、〈空〉とは何かを解説している中村元の『龍樹』を読んでいた保坂氏のもとに届いた『チャパーエフと空虚』。「結論から言ってしまえばこの小説はとにかくおもしろかった」。「ひじょうに冒険的な書き方をしている小説であるにもかかわらず文句なくおもしろい。つまり読者としてあらためて身がまえたりしなくてけっこう受身の態勢でぼんやり読んでいても、作品のほうからきちんとおもしろさを与えてくれる」。という評価で、作品を引用で紹介しながら、主人公の「僕」が「精神病院の中にいることははっきりしている。作品のそういう仕掛けを書いてしまうことを最近では『ネタバレ』と」言うようだが、「この小説はいくらネタバレを書いてもこれから読む人にとって作品の魅力がそがれたりしない。だから、『僕』が精神病院にいることが事前に知られてしまっていてもいっこうにかまわない。この小説はそういう事前の情報から生まれるはるか上空を疾走してゆく」。保坂氏は既に出ている邦訳3冊を「購入して読み出したのだが、どれもまたたく間に惹きこまれてしまう。しかしそれらを読んでしまったら私は収拾がつかなくなって、この『チャパーエフと空虚』についてさえも何か書くどころではなくなってしまうだろう。全部のおもしろかった箇所を抜き出して、こことこことこことここ。といって連載の一回分を済ませてしまうという荒技もないわけではないが、うーん」と。

週刊文春  2007年6月14日号 文春図書館「今週の3冊」
 沼野充義氏・評
 
「現代ロシアでカルト的な人気を誇る作家」、「村上春樹の品のよいファンタジーに、キッチュを恐れない島田雅彦の『毒』を加味してさらにパワフルに、さらに神秘的にしたような作家」の「力量がいかんなく発揮された代表的長編」。「ペレーヴィンの持ち味は、ロシアの混沌とした現実に根ざしながらも、現実の不条理さをさらに加速させるような奔放な想像力、旧ソ連的なキッチュと一種の神秘的傾向の奇妙な組み合わせ、抜群の着想と見事な語りのテクニック、といった点にあり」「彼の代表作が、その強烈な物語世界に見あった現代的な訳文で紹介されたのは、嬉しいことだ」。

トルストイ家の箱舟
ふみ子・デイヴィス 2,500円+税 2007.2刊

朝日新聞  2007年2月26日 文化面「単眼複眼」
「恐妻」の献身と苦悩 文化部 渡辺延志
 
82歳に家出して旅先の小さな駅で生涯を閉じたトルストイの周辺で何がおきたのかを解き明かそうという本書で、著者はソクラテスの妻と並んで悪妻の代名詞となったトルストイの妻ソフィアを「まれに見る献身的な良妻であり、情感豊かな優れた女性」と考える。これまで日本語に翻訳・出版されたことのない最晩年の秘書ブルガーコフの日記を軸に最晩年のトルストイ家の生活をおい、「社会主義のソ連でトルストイの子孫がたどった過酷な運命」をもおっている本書を出版記念パーティーで取材した記事。

図書新聞  2007年3月24日
 白井久也氏・評
妻の座を等身大にえがいて復権したトルストイ研究書 
「ほかならぬ本書の特徴は、トルストイを敬愛してその秘書となったブルガーコフが『日記』のなかで描き出す『トルストイ家の人々の日常のいまだ紹介されていなかったエピソード』を軸にトルストイ本人やソフィア夫人の『日記』、さらに末娘アレクサンドラの『手記』などの記述を随所に織り交ぜながら、トルストイの家出の『謎解き』に挑んだことである」。「トルストイ家出の原因を究明する過去の幾多の分析は、これまで概して男性の目で見たものが多く、その点、女性の立場を代弁する本書の指摘は『なるほど』と思わせる、従来にない新鮮な視点を感じさせる。とりわけソフィア夫人の妻の立場に関する『等身大の復権』は、『ジェンダー(性)差別』の概念を求める今日の時代の要請に合致するものと言え、それがまた本書の大きな魅力にもなっている」。

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それぞれの少女時代
ウリツカヤ 沼野恭子訳 1,800円+税 2006.7刊

毎日新聞  2006年8月6日
作家 堀江敏幸氏・評
「現実を読み切れない幼さと現実を読もうとしない頑なさ、そして現実以上のものを感じ取ってしまう鋭敏さという三つの力に引き裂かれて、少女たちはみずからの居場所をすこしずつずらし、高めていく。世界はその動きにあわせてふるえ、ゆらぎ、ぐらりと大きな傾きを見せて、ふたたびもとにもどる。それを繰り返しているうち、ある日、ある時、もうけっしてあともどりできない成長の瞬間がやってくるのだ。リュドミラ・ウリツカヤは、その決定的な一歩の手前にある力のからみあいを、やわらかいことばでみごとに描きわける」…「身体の奥から流れる血も、その先にある性の目覚めも、ウリツカヤは陰鬱なものにしない。それぞれの少女時代を、彼女たちがいつ終えるのか。読者はそれを、畏怖の念をもって眺めるだろう」。

読売新聞  2006年8月27日
作家 川上弘美氏・評
「いわゆる『鉄のカーテン』とよばれたものの向こう側にいた少女たちの毎日は、思いがけずとても生き生きとしたものだ。」「その中で育った少女たちは、すべての世界の少女たちと同様、のびやかで、明るくて、生きてゆくのに必要なずるさをちゃんと持っていて、じゅんぶん世俗的だ。『少女』という言葉からややもすればにじみ出てきがちな、人工的な甘さは、この小説の中には一つもない。」「少女たちの、女たちの、神聖さと劣悪さを、こんなに率直に書いた小説を、今まで読んだことがあるようで、本当はほとんどなかった。力ある小説家である。」

PHPカラット  2006年12月号 〈カラット図書館 これは読んでおきたい!>
書評家 豊崎由美氏・評
 見開き2ページにわたる大きな書評。「この小説に登場する少女たちの上にも、粛清の嵐が吹き荒れたスターリン時代の暗い影」が落ちているのに、「にもかかわらず読みながらこの6人の少女のことを、わたしはよく知っているという懐かしい気持ちがわき上がってくる」。「生まれ育った時代や国が違っても、少女は少女。身に覚えのある、いろんな感情や経験を蘇らせてくれる、これはそんな時代や国境を軽々飛び越える普遍的な少女文学なのです」と。

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絵物語 デルス・ウザラー
アルセーニエフ パヴリーシン絵 岡田和也訳 2,000円+税 2006.5刊

週刊文春  2006年9月7日号
私の読書日記 池澤夏樹 氏・評
 
「パヴリーシンという現地在住の画家がこの地方の動物や植物、風景などを細密に描いて、それに原テクストから上手に抽出された文章が絡み合うという構成。絵は博物学的に正確、つまりリアリズムの極致で、生き物の躍動感にあふれ、風景はみずみずしい。一点ずつを丁寧に見ていっていつまでも飽きない。」「去年だったか、神沢利子著『鹿よ おれの兄弟よ』(福音館書店)の絵で注目しながらこの画家を紹介しそこなった。今回また機会があってよかった。」

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裸の春1938年のヴォルガ紀行
プリーシヴィン 太田正一訳 1,800円+税 2006.1刊

読売新聞  2006年2月19日
記者が選ぶ 
 
「鳥獣虫魚たちの営み。枝が跳ねて雪を振り落とし、森が裸になる一瞬や、太陽に温められた森全体から水蒸気が上がる光景も見逃さない」「“森の詩人”」の既刊もふくめて「ロシアの自然と文学の奥深さを教えてくれる、愛すべき作家だ」と紹介。

なろうど (ロシア・フォークロア談話会会報)52

評者 中村喜和

「解氷期の大河の氾濫を意味する」「春の水」という「ロシアの季語」―「作家のプリーシヴィンはこの現象を身をもって体験する」。「大きなヘラジカはどんな行動をとるか、狼はどうか、狐やウサギやネズミの運命はどうなるか。プリーシヴィンは何一つ見逃さない。」「自然を外側から描写しながらも、彼自身と周囲の人間の暮らしが自然の中にとけ込んでいる」と紹介。そして「太田さんの翻訳がまたすばらしい」と。

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死に魅入られた人びと
アレクシエーヴィチ 松本妙子訳 2,000円+税 2005.6刊

日ロ交流  2005年10月1日

 
「歴史の表に出ることのない群衆の中の人々がどのように生き、そして何故最後に死を選んだのかを考えさせられる。決して暴露本の類などではない。真摯な著者のまなざしが、今まで一度もスポットライトを当てられることのなかった自殺者たちに向けられた」この本は「ロシア社会の病巣を浮き彫りにする」。「社会主義国家の是非について、その理想、夢、希望とそれらの喪失について当事者の声を抜きにして、われわれは語る資格を持たない」と結んでいる。

図書新聞 2005年11月19日
生と死が不分明となった時代の鏡
評者 米田綱路(編集部)

「アレクシエーヴィチにより「悪魔」と呼ばれる、そう名付けるより他ないもの」が「革命であり、信仰、愛であった時代の人びとが、国家や思想の喪失という空白を、魅せられた死によって埋めようとする証言集といえるだろうか」――目撃者が参加者になり、迫害者が犠牲者になるソ連という国に生きた人間を見つめる。戦争と平和が反対語ではなくなるのと同じように、生と死もひとつに重なる。「とても生きたい、その気持ちが死に魅せられ、自殺をまねく。ソ連崩壊後、悪魔の残した最大の“遺産”であるかもしれない」。

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私のなかのチェーホフ
リジヤ・アヴィーロワ 尾家順子訳 1,800円+税 2005.2刊

週刊文春  2005年6月16日号 私の読書日記

評者 池澤夏樹氏(作家)

「恋愛小説が書きにくい時代」、恋が「情事に堕する」現代に、20世紀前半の恋についての回想が「おもしろかった」という氏から、「邪魔」や「すれ違い」を当然とする「恋」という人間関係が成立しにくい現代を逆照射する視線が伝わってくる評。
アヴィーロワもチェーホフも共に作家で「お互い嘘を構築するのが仕事」ではあるものの、この「つつましい淡い交情の報告にはどこか真摯なものが認められる。それが共感を誘う」と。

週刊文春  2006年10月19日号 私の読書日記

評者 山崎努氏(俳優)

ダーク・ボガードの書簡集『レターズ ミセスXとの友情』につづいて、「イギリス人俳優のエゴについて考えていたら、似たような癖を持つすごい大物がいたことに気付いた。ロシアのあのチェーホフ」ということで本書をとりあげ、「チェーホフの女性との距離のとり方はまさに絶妙」、「人をよく見るためには距離をとることが大事。チェーホフは注意深く距離をとり、そして見る、見る、見る人ではないか」と。
ちなみにアヴィーロワの作品を的確に批評し、細かなアドヴァイスをしている本書掲載のチェーホフの手紙にふれて「表現のコツについて教えられることが多く、僕はこの部分だけでも読む価値があると思った」と。

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ブーニン作品集
第3巻 たゆたう春/夜(岩本和久、吉岡ゆき他訳、解説・望月恒子)  2,300円+税 2003.7刊
第5巻 呪われた日々/チェーホフのこと(佐藤祥子、尾家順子ほか訳、解説・望月恒子)  2,500円+税 2003.7刊

毎日新聞 2003年8月3日
小説の魔法にかかり永遠に出会う

評者 沼野充義(ロシア・スラヴ文学)

「昨今の厳しい出版情勢の中では奇特な企画」として作品集の意義を認め、「今回出た二巻を見ても、簡潔かつ的確に作家の伝記と作品の背景が解説されていて気持ちいい」と総評。
第3巻の小説については、「十九世紀末を経たモダンな官能性」が加わったロシア的世界のなかで「美と快楽の瞬間はいつもはかないのだが、同時にそれが人の一生を最後まで決めてしまうほどの永遠性を獲得」した「ブーニン文学の魔法」を紹介。
第5巻の「生々しい肉声の聞こえる貴重な証言」となっている日記と回想の巻からも読者の興味をそそる引用をして、「今回の作品集には、小説が本当に好きな人たちにはこたえられないブーニンの魅力が詰まっている」と結んでいる。

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落日礼讃
カザケーヴィチ 太田正一訳 2,400円+税 2004.1刊

来日ロシア人研究会会報
異郷

中村喜和氏
各章は独立していながら、全体として一編の見事な自伝となっている。全体の内容は作者の生い立ちの記、家族の肖像、ロシア文学論、日本文化論、そして日露文化比較論。そこで堅苦しい印象をいだくとすれば、とんでもない誤解である。自らが詩人である訳者の巧みな譬えを借用するならば、どの一行からも、ロシアの風が吹いてくる。その風は白樺林や松林を吹きぬける風のようにさわやかなこともあれば、田舎の干草と家畜の糞の匂いや、モスクワのメトロから立ち上ってくる体臭を帯びていることもある。これ以外にロシアはないと絶叫したくなるくらい、ロシアがぎっしりつまった文章。

読売新聞 2004年2月22日書評欄
誠実な詩人のつぶやき 松山巌氏
 「このエッセーは平易で読み易いが、故国ロシアを遠く離れ、日本で暮らす詩人の眼と感受性がなければ、生まれなかった特異な作品だ。」「全編を通じて、この著者がねじれた政治体制のなかで、どうもがき、どう逃避しようとしたのか、その心情が浮び上がる」「ユーモアを絶やさず、誠実に自己を、故国を見つめている」。

朝日新聞 2004年3月14日書評欄
「トルストイもチェーホフも落ち込んだトスカ(ふさぎの虫)の不思議に驚き、ロシア文学にお馴染みの愚鈍者が……『生き延びる』ための悲しい知恵であったことを教えられる。「身辺雑記が突然、小説に昇華するような文体も魅力」

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マンデリシュターム読本
中平耀  3,000円+税 2001.8刊
(ロシア作家案内シリーズ3)

図書新聞 2002年7月6日
投壜通信は敵に宛てられ もっとも遠い敵に届く

評者 瀬尾育生(詩人)

詩を出すとはどういうことか。
一般的に「公的」な発言が同時代の不特定多数に対してなされる場合とはちがい、「詩の言葉は、その不定の読者を『未来』に向かって開いている」。そのことをマンデリシュタームは有名な投壜通信という比喩であらわし、パウル・ツェランがそれを受け取った。
だが、その比喩を何度目かに受け取った者が仲間内でうなずきあっているだけでは、
「プライヴェートな、見えない教会のようなものを形づくる」ことにしかならない。
そのことへの反省をうながしつつ、評者は今一度「投壜通信」を投げ入れたマンデリシュタームの側から、現在と未来に対して言葉を発するとはどういうことであったかを、本書とともに考え直していく。20世紀という時代に詩人と言葉が担わざるを得なかった運命を考察する巻頭書評。

朝日新聞 2002年9月11日
小野十三郎賞の人々

「詩と現実の関係が描かれ、詩論の枠に入りきらないが、すぐれた評伝になっている」(選考委員・荒川洋治氏)

週刊読書人 2002年7月26日付
特集=印象に残った本
2002年上半期の収穫から 45人へのアンケート

細見和之氏(ドイツ思想・詩人)

「マンデリシュタームの全体が、多くの詩とともに緻密に語られている。なによりも詩の翻訳が素晴らしいのがありがたい。20世紀ロシア文学を地道に紹介してきた群像社ならではの名著」。

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ヴェロニカの手帖
ゲンナジイ・アイギたなかあきみつ訳  1,600円+税 2003.4刊

詩学 8月号 詩書選評
松尾真由美

「このロシアの詩人を思うとき、詩人として生きて在ることの厳しさを否応なく考えさせられ、且つその詩作品の自在な表現に私は感嘆を覚える」というH氏賞受賞の詩人による評。「娘の言葉以前のやわらかな混沌を、言葉になる以前の詩の無垢な状態とかさねて、娘によりそい、言葉をつむぐ」。その「根底には、さわやかな二重の無垢から発語する作者の歓びがたゆた」う、と。

GANYMEDE(ガニメデ)28号(8月) 編輯後記
「たなかあきみつが、現代ロシアの詩人ゲンナジイ・アイギの詩の生成にどれほど深い関心を持っているか、この訳本を一見して理解される」と引用を含めての紹介。

ドストエフスキイ 言葉の生命
井桁貞義 著  3,200円+税 2003.2刊

週刊読書人 5月30日付

凡ならざる眼識の持主
遠丸立

「比較文学・文化的方法が十分効果を発揮するかどうかは、眼前に浮上した大きな問題、謎、の解決に立ち向かう筆者、いわば探偵の洞察力、勘、の精粗によるのだろう。井桁探偵が凡ならざる眼識の持主であることは〈ローレンス「大審問官・序文」の謎〉を読めば明らかだ」。これは「氏の真摯な取組み、柔軟な感性を伝える文章だ」。

しんぶん赤旗 6月10日

比較文学手法で読む精神のドラマ
木下豊房

「このロシア作家の思想的奥行きや知的面白みを知ろうと思えば、文学史上のモチーフやテーマの影響、応答関係を知識として知ることは必要である。その意味で本書が読者に寄与するところは大きいであろう」。「西欧合理主義、実証主義などへのロマンチックな反抗」という「後期の作品の主人公達に特徴的に見られる精神的ドラマの追跡」を紹介している。「比較文学研究の手法を用いての論述でやや書物本位の傾きがあるが、豊富な知識に教えられることが多い」。

聖教新聞 6月25日

〈現実〉と〈生〉―響き合う二つの層

 本国ロシアを除けば最も熱心にドストエフスキー文学が読まれてきた国日本における研究の「水準の高さを再認識させる論文集」。ドストエフスキー文学の「〈現実世界〉の層」と「〈聖なる世界〉の層」の二層構造のいずれにも偏することなく、多彩な論文の中で「二つの層」が「余すところなく解き明かされていく」と評。「ドストエフスキー文学が、二つの世紀を超えてなお旺盛な『言葉の生命』を保っているのはなぜか。読者はその答えを本書に見いだすことができよう」と結んでいる。

図書新聞 7月5日

世界文化史上のドストエフスキー
木下豊房

「小説のテキストを『引用のモザイク』と見るフォルマリスト的方法をあえて自覚的に引き受け」て、「ドストエフスキーを世界の文化史のなかで位置付け、その精神史上の意味を解明する」困難な課題に野心的に取り組んで、「ドストエフスキーを理解するための基礎的な知識、情報良の豊富さにかけては、わが国ではこれまでのところ、他に類を見ない一冊」と評価。

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ブルガーコフ 作家の運命
V.サハロフ 川崎浹・久保木茂人訳  2,300円+税 2001.8刊
(ロシア作家案内シリーズ2)

週刊読書人 10月19日付

簡便ながらも第一級の評伝
 うちに息づく独裁者幻想を明るみにさらす         亀山郁夫

ブルガーコフの「生涯と作品を、一種の信仰告白にも似た敬虔な語り口と、卓越したレトリックで綴った、簡便ながらも第一級の評伝である。わが国初の本格的な紹介という点でも、そのパイオニア的な意味は小さくない」と本書を位置付け。「芸術と権力というテーマに照らし出すとき、『ブルガーコフと音楽』という副題をもつ第七章「奇妙な交響曲」が俄然面白くなる」。

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リス 長編おとぎ話
アナトーリイ・キム 有賀裕子訳  1,900円+税 2000.12刊
(群像社ライブラリー8・9)

月刊しにか  2002年11月号
姜信子がすすめる韓国本 異郷の生を語る声 (抄)

 以前より、あの小さな半島から計り知れない数の人々が流れ出ていったことは、知ってはいた(海外コリアンの数は五五〇万人を超える。それは華人、ユダヤ人、インド人、イタリア人に次ぐ数だ。
だが、彼らが、それぞれの場所で、それぞれの言葉で、その生の記憶や希望や絶望や夢や祈りを語り出していることには迂闊にも気づいていなかった。
 旧ソ連に生きる高麗人作家アナトーリイ・キムの声。彼は、その異郷に生きる者の声でロシア文学の伝統に挑発を仕掛け、新たな息吹を吹き込んだと言われる。何より私をひきつけるのは、長編おとぎ話『リス』(群像社)でも特徴的な、時間も空間も生死も個のアイデンティティも、あらゆる境を自在に行き交う作家の魂のありよう。
(韓龍雲『ニムの沈黙』講談社とチャンネー・リー『最後の場所で』新潮社とともに紹介)

毎日新聞 2001年2月11日 書評欄   沼野充義
「小説の常識を根底から揺さぶる・・・何という不思議な小説を書く作家がいるものだろう」

週刊読書人 2001年3月2日    法木綾子
「…ロシアの国民的詩人で作家のプーシキンは、曽祖父がアフリカ人だった。そしてロシアを出て英語で小説を書き世界で名だたる作家となったナボコフ…優れた世界文学はマージナルな(境界の)意識から生まれてくる」

Web現代 外国文学書評欄
〈今週はこれを読め・カリスマ店員が薦めるこの一冊〉

現代文学の剛速球投手が描破した「大いなる悲哀の物語」 

田口久美子 ジュンク堂池袋店の副店長
 
「Web現代」は講談社が発信するインターネット版の雑誌。
書評欄では全国の目利きの書店員を書評者にして、いずれも劣らぬすぐれた書評を掲載しています。
 

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     宮澤俊一
ロシアを友に 演劇・文学・人

テアトロ 2002年11月号 
斎藤偕子氏 

 宮澤俊一『ロシアを友に・演劇・文学・人』と平田康『観客術2』(高菅出版)は、前者がモスクワのロシア演劇の主として演出家を中心に、後者は英米愛蘭の舞台や劇作品について戯曲を軸に語っているのだが、両者ともにどこか似通う雰囲気を感じる。著者が観客席の中で演劇をこよなく愛してそれぞれの国の演劇に接している姿勢に共通点がある、というだけでもない。昭和一桁生まれの同世代の二方が、常に時代の変遷の中で、今われわれにとってという問題意識と芝居の原点とを重ね問う追及の仕方の真摯さが同一ルーツにあり、どのようなときにも身についているということなのだろうか。...
 

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ブブノワさんというひと 日本に住んだロシア人画家
コジェーブニコワ(三浦みどり訳)

婦人の友 2002年7月号
読書のひとときに「20世紀を生きた女性たちを読む」 

小野有五氏(北海道大学大学院地球科学研究科教授)

『ブブノワさんというひと』を皮切りにレオ・シロタの娘ベアテ・シロタ・ゴードンの『1945年のクリスマス』と『銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯』をつないでいく。20世紀という時代をひとつの運命としてわが身にひきうけざるをえなかった女性たち。筆者は父親がブブノワさんの「妹のアンナさんと結婚した」ために、「9歳までブブノワさんと同じ家で暮らしていた」が、「この本を取り上げるのはそういう事情からではない。ブブノワさんというひとりの女性の人生こそ、今を生きる私たちに大きな勇気と示唆を与えてくれると思うからである」という。そして本の著者と訳者の名をあげて、「すばらしい女性たちの力で、ブブノワさんの人生が伝えられたことにも何か運命的なものを感じる」と。  

なお、『ブブノワさんというひと』については、以前アナトーリイ・キム『リス』のすぐれた評を書いてくれたジュンク堂池袋店の田口久美子氏の一文がインターネット上の群像社愛読者ページ「ロシア文学を読もう」のブブノワ特集ページに掲載されている。

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ボタン穴から見た戦争     白ロシアの子供たちの証言
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり訳    2,000円+税  2000.11 刊

日本農業新聞 3月19日書評欄 〈コラム・ブック往来〉
子供が証言する地獄  増田れい子

「私は戦争世代の一人であるし、戦争について書かれた作品なら、たいていのものは読み、取材もし、書いてもきた。」と書き出す評者はかつて毎日新聞の編集委員をつとめたジャーナリストである。その増田氏が「しかし、それがいかに部分に過ぎなかったか、殺戮、ジェノサイド(皆殺し)、虐殺という戦争の真の姿から遠いものだったかを思い知らされた」と書いたアレクシエーヴィチのこの一冊。「戦争を葬る力を持つ一冊である」

新日本文学 2002年3月号 特集「私にとっての1冊の本」
石川逸子「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの祈り」

「実に恐ろしい幕開けをしてしまった」21世紀に「いわば黙示録のよう」にしてある三冊の書物としてアレクシエーヴィチの邦訳書『ボタン穴から見た戦争』『アフガン帰還兵の証言』『チェルノブイリの祈り』をあげている。ロシア文化通信「群」(17号)に掲載されたインタビューも引用し、「愚かな人間へのたまらないいとおしさと捨てられない希望があるから、彼女はペンを捨てないのだろう。彼女の書物のなかの一人一人の悲しみと訴えが、未来へのかそかな希望に思える。」と結んでいる 
 

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私 人     ノーベル賞受賞講演
ヨシフ・ブロツキイ 沼野充義訳    800円+税  1996.11 刊

日本経済新聞 2006年8月11日夕刊〈コラム〉こころの玉手箱
三國連太郎

「十数年間、いつも手近に置いてきた。ポケットに放り込んで旅に出かけ、自宅のトイレにもしょっちゅう持ち込む。自分に嫌気がさすとページを繰りたくなる一冊」。ひとから贈られた本で「詩人の名前も知らなかったが、孤高の詩人のモノローグに次第に引き込まれて」いった。「文化というものは、人が正しく生きる指針となり、困難を乗り越え前進する力を与える。生意気なようだが一人の役者としてそんな気持ちを持ち続けて、映画を作りたい」という三國氏の手にあるこの本の表紙の裏には「人類ノ絶滅ヲ防グノハ文化 座右書 三國」と書き込みがあるという。

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